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今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
「一人レコード・アカデミー賞」のシリーズである()。
本家のレコード・アカデミー賞()とはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみようと思う。
一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。
今回は器楽曲部門。
順序は、発売日の早い順である。
フェスティヴァルデビュー~ルール・ピアノ・フェスティヴァル第38集
ティファニー・プーン、エリーザベト・ブラウス、ティル・ホフマン、他
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以前の記事にも書いたが()、2019年のルール・ピアノ・フェスティバル初登場のピアニストたちの演奏を集めたアルバム。
特に、香港出身の気鋭のピアニスト、ティファニー・プーンの弾くバッハのフランス組曲第5番の美しさは、シフの決定的名盤にも迫るほど。
他に、エリーザベト・ブラウスの弾くスカルラッティ、ティル・ホフマンの弾くバッハおよびブラームスが印象的。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
ラヴェル:クープランの墓、メヌエット、リスト:バラード第2番、バッハ:最愛の兄の旅立ちに寄せて、他
務川慧悟
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以前の記事にも書いたが()、フランスのパリ音楽院に留学し、フランスのロンティボーコンクールで第2位を受賞した()彼は、フランス音楽を自家薬籠中の物としている。
ここに聴かれるラヴェルの曲はいずれも完成度の高さに加え、みずみずしい情感と洒脱なエスプリを感じさせてくれる。
リストとバッハも丁寧に弾き込まれている。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
シューマン:幻想曲、クライスレリアーナ、アラベスク
ソン・ヨルム
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ソン・ヨルムは、最高度の技巧を持ちながらもやや慎重なところがあり、音楽が地味になりがちなきらいがないではないが、今回のアルバムではそんな彼女の手探りな性質が、晦渋なシューマンの世界を丁寧に表現し得ている。
幻想曲はリヒテルやアンデルジェフスキ、ティファニー・プーンの名盤に匹敵するし、クライスレリアーナはもしかしたらこれまでのどの盤にも勝るものかもしれない。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
フランク:Preludes, Fugues & Chorals~ピアノ作品集
ニコライ・ルガンスキー
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フランクの音楽は、フランス人ピアニストにしばしば聴かれる軽めの硬質な音よりも、オルガンを思わせる重めの深々とした響きが欲しい。
当代随一のラフマニノフ弾き、ルガンスキーによる「前奏曲、コラールとフーガ」の“透明なる重厚さ”は、みずみずしいカーノ・スミットや情熱的なEunSeong Kimの名演に匹敵するもの。
晩年の「前奏曲、アリアと終曲」の深いロマンも、当盤に比べられるものといったらコルトーの古い録音くらいしか思い浮かばない。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
J.S.バッハ:トッカータ集
鈴木雅明(チェンバロ)
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以前の記事にも書いたが()、現代最高のバッハ弾き、鈴木雅明が進めているバッハ録音シリーズの一環。
バッハというと、たとえトッカータのように自由で華やかな初期作品であっても、ただスラスラ弾くだけでなく様式感を大事にすべきである、と考える向きにはお勧めしたい一枚。
レオンハルトがトッカータ全曲録音を残さなかったことを鑑みると、躍動感と風格とのバランスの絶妙さにおいて、当盤以上のトッカータ集は他にないのではないか。
その他、リベールの弾くバッハ&バルトークのピアノ曲集、チョ・ソンジンの弾くシューベルト「さすらい人幻想曲」およびベルク&リストのピアノ・ソナタ()、ホロデンコの弾くプロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番他()、ルイスの弾くベートーヴェンのバガテル集、シュフの弾くベートーヴェンの「悲愴」「テンペスト」ソナタ他()、ペレーニの弾くバッハの無伴奏チェロ組曲全曲()、佐藤卓史の弾くソナチネ・アルバム1などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。
この5つの中から一つ選ぶとすると、バッハのトッカータにおいて最高の全集を打ち立てた鈴木雅明ということになろうか。
というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020の器楽曲部門は、
J.S.バッハ:トッカータ集
鈴木雅明(チェンバロ)
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ということにしたい。
なお、実際のレコード・アカデミー賞2020の器楽曲部門は、鈴木雅明によるJ.S.バッハ:オルガン作品集第3集であった。
これは、輸入盤だと2019年発売であるため私は選ばなかったが、もし2020年発売であったならば私も選んでいたかもしれない。
できれば彼にはぜひとも、バッハの鍵盤楽器全曲録音の偉業を達成してほしいものである。
ちなみに、「一人レコード・アカデミー賞」のこれまでの記事はこちら。
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